企業の取り組みを考えよう
土屋正春(主坦研究員)
 
1 エコと企業努力
 私たちが自動販売機などで手にする飲料の種類は増える一方です。当初はペットボトル(PB)入りの飲料はごみを増やすことに直結するとして否定的な扱いをされていたのですが、今では環境省関連の会議でもPB飲料が机に並びます。リサイクルの方法が社会的には確立しているという判断があるのでしょう。
 このPB飲料の販売合戦の裏側には熾烈なシェア争いがあることは知られている通りですが、ことミネラルウォーターに関する限り「いろはす」の売上No1は当分続きそうです。「いろはす」は昨年の5月に発売になり、ボトルの本体重量をわずか12グラムに抑えたことで広く知られるようになりました。その後183日間で売上合計2億本を達成したと公表されていますが、消費は商品に対する投票だとすれば、消費者から2億票もの支持を得たことになります。
 この「いろはす」と同時に発売されたのがエコカーの代名詞にもなった3代目「プリウス」で、これも売り上げ第1位を続けています。もうひとつ自動車の例を挙げると、この7月に発売した新型「マツダ・プレマシー」の累計受注台数が8月1日現在で月間販売計画1800台の4倍以上となる7240台に達し、その要因の一つが独自のアイドリングストップ機構にあると発表されています。競争に勝ち抜くための厳しい企業努力が目に見えるようです。
2 「いろはす」と「エコカー」
 では、「いろはす」と「エコカー」の違いは何でしょう? どちらも環境にやさしい製品として支持されているのですが、エコカーは燃費の比較での消費者の選択をはっきり示しているといえます。エコノミーであるがゆえ支持されているのだと言えるでしょう。そう、はっきりと「¥」でトクをするのです。これに対して「いろはす」を選んで何かトクをするでしょ
 
 
うか。価格は販売機に並ぶ他の銘柄と同じです。ミネラルウォーターですから味の違いはないに等しいことを考えると、これを選んで得る満足感は「¥」とは関係がなさそうです。なので、ここでは仮に「?」としておきましょう。
3 ある会議でのこと
 8月に出席した会議で、LED照明への転換から生物多様性への配慮まで、企業の先進的な取り組みがいろいろと話題になりましたが、その多くは大企業のもので日本の経済を下支えしている中小零細企業の積極的な事例はほとんど見られませんでした。  
 競争のために製造拠点を海外に移転するなど自らが変われる大企業は別にして、そうは行かないここの部分をどうするのか、会議の合間に話をした環境省と経済産業省の担当課長は二人ともこのレベルへの輪を広げることの必要性と難しさを痛切に感じているようでしたが、私はやりとりをしながら先日もお伝えしたG.ネルソンの「草の根運動論」を想い起こしていました。スタイルを変えることの難しさ、そのためにも運動は多様化せざるを得ないとした議論です。上から目線、では成功は望むべくもないのです。
4 次への期待
 会議の後で同じビルにある環境省のパートナーシッププラザを訪れて、中小企業の取り組みと市民活動の連携のような事例を尋ねたところ、そうしたことの重要性は増す一方だがこれといった例は残念ながら聞いてないとのことでした。
 私たちはこれを吹田で実現できないのでしょうか。実現するには何がたりないのでしょうか。早い話が、企業にとっての「?」の実体は何なのでしょう。
 こうした取り組みに挑戦するグループの誕生を切に期待するものです。
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