すいた環境連続セミナー2015
          「パタゴニアの考える企業の責任とは」
              講師 パタゴニア日本支社長  辻井 隆行 氏
                                      布deエコPT  水川 晶子
 アウトドアスポーツを通じて世界を見て来られ
た辻井さんのお話は、体験に基づく説得力があり、
ついつい引き込まれました。「うそをつかないとか、
誠実とか、人に迷惑をかけない」という価値観を
求めて転職し今の会社に入ったが、崇高なミッシ
ョンを知るのは後々のことだったと話されました。
 
パタゴニアの使命
 パタゴニアは「ビジネスを使って環境問題を解
決する。他企業に影響を与えて行く」ことを使命
にしているそうです。
 まず、会社のこだわりの一つは地球上で一番環
境負荷が低い材質を探すことにあるという事例を
話されました。品物を扱う店員の体調が悪くなっ
た原因が、製品のTシャツから出たホルムアルデ
ヒドと分かり、コットン栽培に殺虫剤や農薬が大
量に使用されていることが判明したため、オーガ
ニックコットンだけを使うことに決めました。「知
ってしまった以上、何かしないと結局自分たちに
返って来る。」これはパタゴニアの創業者で、現オ
ーナーのイヴォン・シュイナードの言葉です。
 もう一つは、縫製工場では従業員が、低賃金に
抑えるため搾取されることが多く、その上環境の
悪いところで働かされる場合も多いので、フェア
トレードや職場環境を整えることを条件に契約し
ているということです。
 
売り上げの1%を環境団体に寄付
 パタゴニアは1985年から環境団体に寄付を
続けています。2001年には1%フォー・ザ・
プラネットを設立し、これには世界で1200社、
日本では55社が加盟しています。健康な地球を
創るために資金援助することを誓約したビジネス
のネットワークを構築し、その活動を支援、促進
することがミッションだそうです。
 環境問題というと、環境を守ることだと思いが
ちですが、突き詰めると「人間が地球でこの先も
生きていけるか」という話になります。水がなく
なろうが、石油がなくなろうが、温暖化が進もう
 
が、人間はいなくなっても地球は存在する。環境
問題とは人間の問題であるということです。

4Rの順番をしっかり考える
 (1)リデュース(減らす)「本当に自分に必要
なものかよく考えて買う。」(2)リペア(修理)「日
本にはもったいないという言葉があるが、壊れて
も修理して使おう。」(3)リユース(再使用)「ど
うしてもいらなくなったら必要としている人達に
譲る。パタゴニアはヤフオクと提携している。」
(4)リサイクル(再生利用)「どうしても使えな
くなった物をリサイクルしよう。」
  セミナー会場の様子
 
失うものは美しいもの
 長崎県の川棚町の石木川ダムで、パタゴニア日
本支社は「石木ダム反対運動」を支援しているこ
とを話されました。ここは日本棚田100選に選
ばれたところで、蛍がいて、長崎県レッドデータ
ブックに載っている100種類以上の生き物がい
ます。ダムができると生物多様性が失われます。
佐世保市の人口も水の需要も減っているのに、こ
のダムは本当に必要なのでしょうか。川棚町の住
民は集落を去ることを与儀なくされ、恩恵を被る
のは佐世保市民といわれているが、ダムの維持費
は水道代にはねかえってきます。もう一回見直す
時期ではないでしょうか。「十分議論をして、市民
が大切なお金の使い方を考えて行くことができれ
ば、全国の同じような問題解決のための一助にな
るのでは。」と結ばれました。
 いろいろと多くのことを学んだ講演会でした。
P3     10月に戻る TOPに戻る